出典: 日本火山の会:火山ライブラリー

鬼押出し熔岩流のナゾに迫る


酒井 康弘


ブイツーソリューション
2006年
1300円

フィールドガイド・観光ガイド・火山の理工学
火山の人文社会学・火山防災・噴火記録



 著者は長野県東御市で開業している現役の医師で,アトピーやアレルギーがご専門のようです.著者は平成17年に浅間山に登った際,中腹から望遠レンズで見た熔岩流の溶岩堤防の様子が,浅間園で見る鬼押し出し溶岩の様子とはまったく異なっていたことに衝撃を受け,天明噴火に強い興味を持ったそうです.それがきっかけとなって,自費出版にまで発展したというから驚きです.

 さて内容は,日頃著者が浅間山に対して感じている親しみや,噴火現象への強い興味,そしてそれらをとりまとめようとする知的なバイタリティがひしひしと伝わってくるものです.火山の専門家でない人が数年でとりまとめたということを考えれば,これは驚くほどよく書けていると思います.著者は,気象庁の資料や古文書そして絵図に至るまで様々な資料を精力的集めています.また,何度も現地に足を運び産状を観察し写真に収め解釈を考えた点も,評価ポイントだと思います.浅間山に近い人がこの本を手にしたならば,本を片手に,自分も同じ場所に行って確認してみたくなることでしょう.ただ,自説の部分には「?」と思える部分がありました.私は特に溶岩の物性に関する考えにズレを感じました.ですが,このズレ自体は問題にすべきでなく,何故ずれているのかを考えることが大事でしょう.専門家と一般の方のコミュニケーション法を考えることは火山の防災の際に重要なことです.この本からは,十分知的な人が専門知識なしでどのように火山を理解しているか,も読みとれます.というわけでこの本は,観光を拡張してみたい人にも,火山防災に携わる人にも,一読の価値があるでしょう.

  • 著者によるサイト「鬼押出し熔岩流のナゾに迫る」
    (2007年 6/29 宮城磯治)
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